身近な「日本茶」には、リラックス効果や穏やかな眠りを誘う可能性があります。一日の終わりに温かい日本茶をゆっくり味わう習慣は、神経を鎮め、緊張を解きほぐすのに役立ちます。温かさ、香り、成分が複合的に作用し、眠りの準備を整えます。
ただし、カフェインを含むため種類選びや淹れ方には注意が必要です。適切に選べば、日本茶は睡眠の質を高める味方になります。この記事では、睡眠に悩む方へ、科学的知見を交え、寝る前におすすめの日本茶の種類、理由、楽しみ方を解説します。
日本茶と睡眠の関係 リラックス成分の科学
日本茶のリラックス効果には、「テアニン」と「GABA」が関わっています。
テアニン 心を穏やかにするアミノ酸

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テアニンはお茶に含まれるアミノ酸で、特に玉露や抹茶に豊富です。旨味成分であり、被覆栽培で増加します。若い芽(一番茶)に多く含まれます。
テアニンの睡眠への貢献は主に二つのメカニズムです。
- 脳波への影響によるリラックス効果テアニン摂取でリラックス状態を示すα波が増加します。摂取後30~50分でα波が活発になり、ストレスや不安が和らぎます。
- 脳内の神経伝達物質への作用神経の興奮を抑えるGABAの作用を助け、興奮させるグルタミン酸の過剰な働きを調整する可能性が指摘され、精神安定に繋がると考えられます。
これらの作用で、テアニンは寝つき改善、中途覚醒短縮、起床時疲労感軽減などに貢献すると期待されます。また、カフェインの覚醒作用を穏やかにする働きもあると言われます。
ただし、テアニンに直接的な催眠作用はありません。リラックス状態を促しますが、日中の眠気は誘発せず、むしろ集中力を高める効果も。ストレス等で乱れたバランスを整え、自然な眠りの準備状態を作るのが役割です。
GABA 神経の興奮を鎮めるブレーキ役
GABAは脳内に存在する抑制性神経伝達物質で、「脳のブレーキ」として神経の過剰な興奮を抑え、精神安定やリラックスに役立ちます。
強いストレスで消費され不足しがちで、不足すると不安やイライラを感じやすくなります。日本茶には自然にGABAを含むものや強化した製品もあります。
GABAは神経を鎮静化しリラックスを促進します。研究では、深いノンレム睡眠を増やし、寝つきを良くし、起床時の満足度を高める可能性が示唆されています。
摂取タイミングは寝る前30分~1時間前が効果的とされますが、日中の摂取でも夜の睡眠満足度向上に繋がる可能性があり、日中のストレス軽減が間接的に影響すると考えられます。
テアニンとGABAの相乗効果
テアニンとGABAは異なるメカニズムで作用しますが、日本茶に含まれる場合、互いに協力し、より効果的に不安を和らげ、穏やかな睡眠に必要な状態を作るのに役立つ可能性があります。
カフェインの影響 夜の日本茶選びで知っておきたいこと
日本茶のリラックス効果を期待する一方、カフェインの存在は無視できません。寝る前に飲む際は、カフェインを理解し、適切な種類を選ぶことが重要です。
カフェインが睡眠に与える影響
カフェインは中枢神経を刺激し、眠気を覚ますアデノシンの働きを阻害します。日中の適量摂取は有効ですが、就寝前の摂取は寝つきを悪くし、睡眠を浅くし、中途覚醒を増やすなど質を低下させる可能性があります。
効果は摂取後約30分から現れ、半減期は通常4~5時間。就寝前4~5時間は摂取を避けるのが望ましいです。
日本茶の種類によるカフェイン含有量の違い
日本茶の種類でカフェイン量は大きく異なります。主な目安(浸出液100mlあたり)は以下の通りです。
飲み物の種類 | カフェイン含有量 (mg/100ml) |
玉露 (Gyokuro) | 約 160 |
抹茶 (Matcha) | 約 64 (※1杯あたり) |
煎茶 (Sencha) | 約 20 |
ほうじ茶 (Hojicha) | 約 20 (※平均値) |
茎茶 (Kukicha) | 煎茶より少ない傾向 |
番茶 (Bancha) | 約 10 |
玄米茶 (Genmaicha) | 約 10 |
紅茶 (Black Tea) | 約 30 |
コーヒー (Coffee) | 約 60 |
※数値は目安。
玉露・抹茶はカフェインが多く寝る前には不向き。番茶・玄米茶は比較的低カフェインです。
カフェイン含有量に差が出る理由
- 栽培方法: 被覆栽培(玉露など)はカフェイン増。
- 収穫時期: 若い芽(一番茶)は多く、成熟した葉(番茶など)は少ない。
- 使用部位: 茎は葉より少ない(茎茶)。玄米茶は玄米ブレンドで茶葉量が減る。
- 加工方法: ほうじ茶は焙煎でカフェインが減少する傾向。
ほうじ茶のカフェイン量 少し注意したい点
「ほうじ茶はカフェインが少ない」イメージがありますが、原料により差があります。平均値が煎茶並みなのは、カフェイン多めの一番茶なども原料に使われるためです。
重要なのは原料。番茶や茎を原料としたほうじ茶(茎ほうじ茶など)は、より低カフェイン傾向です。寝る前に飲むなら原料を確認するか、「低カフェイン」表示の製品を選びましょう。
快眠をサポート おすすめの日本茶ガイド

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カフェインが比較的少なく、リラックス効果が期待できる寝る前におすすめの日本茶を紹介します。
ほうじ茶 香ばしさに癒される定番
強火焙煎による香ばしさが魅力。苦味・渋みが少なくすっきりした味わい。一般的にカフェイン少なめ(特に番茶・茎原料)。香り成分「ピラジン」にリラックス効果も。より低カフェインなら「茎ほうじ茶」「棒ほうじ茶」などを。
番茶 日常使いの優しい味わい
夏以降収穫の葉や茎で作る日常茶。カフェインが少ないのが利点(煎茶の半分程度)。刺激が少なく胃にも優しい。「三年番茶」は熟成・焙煎でさらにカフェイン等が少なくまろやか。「赤ちゃん番茶」(カフェインゼロ)も。
玄米茶 香ばしさと緑茶の調和
緑茶に炒り玄米をブレンド。カフェインを含まない玄米で一杯あたりのカフェイン量が低め(番茶と同程度)。玄米の香ばしさと緑茶のテアニンでリラックス効果が期待されます。ノンカフェインタイプも。
茎茶(雁が音・棒茶) 低カフェイン・高テアニンの可能性
煎茶・玉露製造時の茎や葉脈を使用。茎は葉よりカフェインが大幅に少なく、テアニンは豊富。「低カフェイン・高テアニン」の理想的な組み合わせの可能性。カフェインを避けつつテアニン効果を得たい場合に最適。茎を焙じた「茎ほうじ茶」も人気。
特殊加工された低カフェイン・ノンカフェイン日本茶
カフェインを除去・低減した製品も増加中。煎茶、ほうじ茶、玄米茶、和紅茶タイプなど多様。カフェインに敏感な方や時間を気にせず楽しみたい方に。
夜のお茶時間 もっと楽しむための淹れ方
淹れ方の工夫でリラックス効果を高め、カフェイン摂取を抑えられます。「お湯の温度」と「抽出時間」がポイントです。
お湯の温度が鍵 カフェインを抑え、旨味を引き出す
- カフェイン抑制は低温で: カフェインは高温で溶け出すため、低温(70℃~80℃)で淹れると抽出量が減ります。
- テアニンは低温でもOK: 旨味成分テアニンは低温でも十分溶け出し、むしろ甘みを感じやすくなります。
- 水出し: カフェイン・カテキン抽出を大幅に抑え、テアニンの旨味・甘みが際立つまろやかな味に。
ほうじ茶の淹れ方 香りか、低カフェインか
香ばしさは熱湯で最も引き出されますが、カフェイン抽出も促進します。
- 香り重視なら熱湯: カフェイン量は増えますが、低カフェイン原料なら心配は少ないかも。抽出は短めに。
- 低カフェイン重視なら低温・水出し: 香りは穏やかになりますが、カフェイン量は確実に抑えられます。
「香り」と「低カフェイン」のどちらを優先するかで調整しましょう。
抽出時間も大切に
低温抽出は少し長め(例:70℃で1分半~2分)、熱湯のほうじ茶等は短め(30秒~45秒)が目安。好みで調整を。
リラックスのための「お茶の儀式」
丁寧に淹れ、味わう行為自体が心を落ち着かせます。「今ここ」に集中する瞑想のような時間に。
より良い睡眠のために タイミングと注意点

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効果的で安心な習慣にするため、タイミングと注意点を解説します。
飲むなら就寝の30分~1時間前が目安
テアニン等の効果発現時間を考慮し、就寝予定時刻の30分~1時間前が理想的。スムーズな入眠をサポートします。
自分の体質と相談することが大切
カフェイン感受性は個人差大。低カフェイン茶でも影響を感じる可能性あり。少量や薄めから試し、体調を観察しましょう。
安全性について知っておきたいこと
- テアニン・GABA: 通常の飲用範囲では安全性が高い。
- 薬との相互作用: 降圧剤や中枢神経に作用する薬を服用中は医師・薬剤師に相談を。
- 妊娠中・授乳中: 安全性データ不十分。心配なら医師に相談、低/ノンカフェイン選択も。
- 特定の健康状態: 持病のある方は医師に相談を。
意外な落とし穴? 夜中のトイレ問題
寝る前の水分摂取は夜間頻尿リスクも。睡眠中断を避けるため、飲む量やタイミング(例:就寝1時間以上前)を調整しましょう。
日本茶と他の飲み物 就寝前ドリンク比較
ハーブティー、麦茶、温かい牛乳などと比較し、低カフェイン日本茶の特徴を見ます。
低カフェイン日本茶のユニークな立ち位置
低カフェインに加え、「テアニン」「GABA」という科学的に研究されたリラックス成分を含む点が、他のノンカフェイン飲料との大きな違いです。
ハーブティー 多様な香りと穏やかな鎮静効果
ノンカフェインで多様な植物由来の香りや効能が期待でき人気。カモミール(鎮静)、ルイボス(ミネラル・抗酸化)、バレリアン(強めの鎮静)、レモンバーム(緊張緩和)など種類豊富。
その他のノンカフェイン飲料
- 麦茶: ノンカフェイン。香ばしくミネラル補給に。香り成分にリラックス効果も。
- 温かい牛乳: トリプトファン(セロトニン・メラトニン原料)を含む。体を温めリラックス。
日本茶ならではの魅力とは
飲み物選びは好みや効果によります。ハーブティーは多様な香り・鎮静効果、麦茶は手軽さと安心感、牛乳は栄養と温め効果。
低カフェイン日本茶のユニークな点は**「テアニン」**。α波を増やし「リラックスしつつも、ぼんやりしない」独特の状態を作るとされます。ハーブティーの鎮静効果が強すぎると感じる場合や、日本茶の風味で穏やかなリラックス感を得たい場合に独自の選択肢となります。科学的根拠のある成分を身近なお茶で美味しく摂取できるのが魅力です。
穏やかな眠りのために日本茶という選択
質の高い睡眠は健康の基盤です。寝る前の日本茶はリラックスを促し、穏やかな眠りを助ける可能性があります。
重要なのはカフェイン量に注意し適切な種類を選ぶこと(ほうじ茶、番茶、玄米茶、茎茶等)、そして淹れ方(特に温度)を工夫すること。これによりテアニン等の恩恵を受けやすくなります。
ただし日本茶は万能薬ではなく、睡眠の質は生活習慣全体が影響します。寝る前の日本茶は、健やかな睡眠をサポートする心地よい習慣の一つです。
自分の体調や好みに合わせ、無理なく楽しく続けられる方法を見つけましょう。この記事を参考に、あなたにとって最高の、穏やかな眠りへと誘う一杯を発見してください。
古くから伝わる日本茶の知恵を現代生活に取り入れ、穏やかで心地よい夜を過ごし、より深く満たされた睡眠を手に入れる一助となれば幸いです。
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